語根 DHĒ|コアイメージと英単語(do, fact, theme など)

do、fact、theme など多くの重要単語に使われている DHĒ について紹介します。

語根 DHĒ の特徴は、応用範囲がとても広いこと。
英単語の語根としては、かならずマスターしておきたい超重要事項といえます。

DHĒ をしっかり使えるようになれば、膨大な派生語の意味が(知らない単語であっても)推測できるようになり、ボキャブラリーが一気にパワーアップします!

DHĒ のコアイメージ

DHĒ は印欧祖語の語根で、原義的には「据える・置く to set, put」を表します。

イラストのように、ものを「据え付ける」「置く」様子は、何かを「つくる」動作にも見えますよね。

そこから、「つくる」さらに「行う」というコアイメージが派生します。

英単語を見てみると、「つくる・行う」という日本語を当てはめるとピッタリなものがほとんどです。

なかには、sacrifice(犠牲)のように、「神聖に・据える・もの」という(古代から受け継いだらしい)原義をいまだに保持している単語もありますが…

DHĒ の発音は、平仮名で書くと「どぅへぇ」になるでしょうけど、ちょっと厄介な事情を抱えています。

DHĒ の冒頭子音「dh」は、「d」「h」「f」「th」「t」などのバリエーションがあるんです。

英単語の場合、
d:do, deed …
f:fact, face …
th:theme, thesis …
という3グループに別れます。

英語以外のヨーロッパ語でも、独 tun 行う、仏 faire 行う、伊 fare 行う、西 hacer 行う、露 делать / delat’ 行う などに語根 DHĒ が使われています。

スペイン語には、「h」が登場していますね。
原音「dhē」をもっともよく継承しているのは、ロシア語の делать / delat’ です。

では、代表的な英単語をリストアップしてみましょう。

DHĒ をもつ英単語(例)

接頭辞をもたない単語

deed / dí:d /
DEE・d
[DEE 行う]-d こと
行為

do / du /
DO
[DO 行う]
行う

face / féis /
FA・(i)ce
[FA つくる]-(i)ce もの

facility / fəsíləti /
FA・c・il・ity
[FA 行う]-c ことが -il できる -ity 条件
施設

facilitate / fəsílətèit /
FA・c・il・it・ate
[FA 行う]-c ことが -il できる -ate ようにする
容易にする

faculty / fæ’kəlti /
FA・c・ul・ty
[FA 行う]-c ことが -ul できる -ty 条件
才能

fact / fæ’kt /
FA・ct
[FA 行った]-ct 成果
事実

factor / fæ’ktər /
FA・ct・or
[FA 行った]-ct 成果 -or を成すもの
要因

factory / fæ’kt(ə)ri /
FA・ct・ory
[FA つくる]-ct 成果 -ory を成す場所
工場

factual / fæ’kʧuəl /
FA・ct・ual
[FA 行った]-ct 成果 -ual の
事実の

fashion / fæ’ʃən /
FA・(i)sh・ion
[FA つくる]-(i)sh 原因を成す -ion もの
ファッション

fashionable / fæ’ʃ(ə)nəbl /
FA・(i)sh・ion・able
[FA つくる]-(i)sh 原因を成す -ion もの -able となり得る
流行の

feasible / fí:zəbl /
FEA・s・ible
[FEA 行う]-s ことが -ible できる
実行できる

feat / fí:t /
FEA・t
[FEA 行った]-t 成果
偉業

feature / fí:ʧər /
FEA・ture
[FEA 行った]-ture 成果
特色

fiction / fíkʃən /
FI・ct・ion
[FI つくった]-ct ことの -ion 成果
フィクション

theme / θí:m /
THE・me
[THE つくる]-me 対象
主題

thesis / θí:sis /
THE・sis
[THE つくる]-sis 条件
命題

接頭辞をもつ単語

affair / əféər /
af・FA・ir
af- 前向きに[FA 行う]-ir こと
※af- < ad-(forward 前向きに)
業務

affect / əfékt /
af・FE・ct
af- 前向きに[FE 行う]-ct こと
※af- < ad-(forward 前向きに)
影響する

affection / əfékʃən /
af・FE・ct・ion
af- 前向きに[FE 行う]-ct こと -ion への過程
※af- < ad-(forward 前向きに)
愛情

affectionate / əfékʃənət /
af・FE・ct・ion・ate
af- 前向きに[FE 行う]-ct こと -ion への過程 -ate の
※af- < ad-(forward 前向きに)
愛情のある

artificial / ɑ`:rtəfíʃəl /
arti・F・ic・ial
arti- 人為的に[F つくった]-ic もの -ial の
人工の

artifact / ɑ’:rtəfæ`kt /
arti・FA・ct
arti- 人為的に[FA つくった]-ct 成果
人工物

befit / bifít /
be・FI・t
be- すっかり[FI つくった]-t 成果
※be- < *ambhi-(around)
ふさわしい

benefit / bénəfìt /
bene・FI・t
bene- 良く[FI つくった]-t 成果
利益

beneficial / bènəfíʃəl /
bene・F・ic・ial
bene- 良く[F つくった]-ic もの -ial の
有益な

benefactor / bénəfæ`ktər /
bene・FA・ct・or
bene- 良く[FA つくった]-ct 成果 -or をもたらす人
恩人

counterfeit / káuntərfìt /
counter・FEI・t
counter- 反して[FEI つくった]-t 成果
偽造の

deficiency / difíʃənsi /
de・F・ic・iency
de- 乖離[F つくった]-ic もの -iency であること
※de- 離れて
欠陥

deficient / difíʃənt /
de・F・ic・ient
de- 乖離[F つくった]-ic もの -ient の
※de- 離れて
欠陥のある

defect / dí:fekt /
de・FE・ct
de- 乖離[FE つくった]-ct 成果
※de- 離れて
欠点

defective / diféktiv /
de・FE・ct・ive
de- 乖離[FE つくった]-ct 成果 -ive の
※de- 離れて
欠点のある

defector / diféktər /
de・FE・ct・or
de- 乖離[FE つくった]-ct 成果を -or もたらす人
※de- 離れて
離反者

defeat / difí:t /
de・FEA・t
de- 乖離[FEA 行った]-t 成果
※de- 離れて ※名詞→動詞 転用
敗北させる

deficit / défəsit /
de・F・ic・it
de- 乖離[F つくる]-ic ための -it もの
※de- 離れて
不足額

difficult / dífikʌ`lt /
dif・F・ic・ul・t
dif- 否定[F 行う]-ic ために -ul できる -t こと
※dif- < dis- = not
困難な

difficulty / dífikʌ`lti /
dif・F・ic・ul・ty
dif- 否定[F 行う]-ic ために -ul できる -ty こと
※dif- < dis- = not
困難

disaffected / dìsəféktid /
dis・af・FE・ct・ed
dis- 否定 af- 前向きに[FE 行う]-ct こと -ed の
※dis- = not ※af- < ad-(forward 前向きに)
不平のある

efficacy / éfikəsi /
ef・F・ic・acy
ef- 顕在化[F 行う]-ic ことの -acy 成果
※ef- < ex-(out 外に)
効能

efficiency / ifíʃənsi /
ef・F・ic・iency
ef- 顕在化[F 行う]-ic ことの -iency 成果
※ef- < ex-(out 外に)
効率

efficient / ifíʃənt /
ef・F・ic・ient
ef- 顕在化[F 行う]-ic ことの -ient 成果のある
※ef- < ex-(out 外に)
効率的な

efficiently / i:fíʃ(ə)ntli /
ef・F・ic・ient・ly
ef- 顕在化[F 行う]-ic ことの -ient 成果のある -ly 状態で
※ef- < ex-(out 外に)
効率的に

effect / ifékt /
ef・FE・ct
ef- 顕在化[FE 行った]-ct 成果
※ef- < ex-(out 外に)
効果

effective / iféktiv /
ef・FE・ct・ive
ef- 顕在化[FE 行った]-ct 成果 -ive のある
※ef- < ex-(out 外に)
効果的な

effectively / iféktivli /
ef・FE・ct・ive・ly
ef- 顕在化[FE 行った]-ct 成果 -ive のある -ly 状態で
※ef- < ex-(out 外に)
効果的に

effectiveness / i:féktivnəs /
ef・FE・ct・ive・ness
ef- 顕在化[FE 行った]-ct 成果 -ive のある -ness 状態
※ef- < ex-(out 外に)
有効性

freedom / frí:dəm /
free・DO・m
[FREE 快く][DO 行う]-m もの
※free < *pri-(to love)
自由

imperfect / impə’:rfikt /
im・per・FE・ct
im- 否定 per- すっかり[FE 行った]-ct 成果
不完全な

imperfection / ìmpərfékʃən /
im・per・FE・ct・ion
im- 否定 per- すっかり[FE 行った]-ct こと -ion の成果
不完全性

indeed / indí:d /
in・DEE・d
in- 中にしっかりある[DEE 行う]-d こと
※in- 中に > しっかりある
実際に

inefficient / ìnifíʃənt /
in・ef・F・ic・ient
in- 否定 ef- 顕在化[F 行う]-ic ことの -ient 成果のある
非効率的な

ineffective / ìniféktiv /
in・ef・FE・ct・ive
in- 否定 ef- 顕在化[FE 行った]-ct 成果 -ive のある
効果のない

ineffectual / ìnifékʧuəl /
in・ef・FE・ct・ual
in- 否定 ef- 顕在化[FE 行った]-ct 成果 -ual のある
効果のない

infect / infékt /
in・FE・ct
in- 中に[FE つくる]-ct 成果
※名詞→動詞 転用
感染させる

infection / infékʃən /
in・FE・ct・ion
in- 中に[FE つくる]-ct ことの -ion 成果
感染

infectious / infékʃəs /
in・FE・ct・ious
in- 中に[FE つくる]-ct 成果 -ious にあふれる
感染力のある

insufficient / ìnsəfíʃ(ə)nt /
in・suf・F・ic・ient
in- 否定 suf- 下から上まで[F 行った]-ic ことの -ient 成果のある
※suf- < sub-(up from under 下から上まで)
不十分な

magnificent / mægnífəsnt /
magni・F・ic・ent
magni- 大きく[F つくった]-ic ことの -ent 成果の
壮麗な

manufacture / mæ`njufæ’kʧər /
manu・FA・ct・ure
manu- 手で[FA つくる]-ct ことの -ure 成果
※名詞→動詞 転用
製造する

manufacturer / mæ`njufæ’kʧ(ə)rər /
manu・FA・ct・ur(e)・er
manu- 手で[FA つくる]-ct ことの -ur(e) 成果 er をもたらす人
製造者

office / ɔ’:fis /
of・F・ice
[OF 仕事を][F 行う]-ice ところ
※of < 語根 *op- (to work)
オフィス

official / əfíʃəl /
of・F・ic(e)・ial
[OF 仕事を][F 行う]-ic(e) ところ -ial の
※of < 語根 *op- (to work)
職務上公式の

officially / oufíʃi /
of・F・ic(e)・ial・ly
[OF 仕事を][F 行う]-ic(e) ところ -ial の -ly 状態で
※of < 語根 *op- (to work)
職務上公式に

officer / ɔ’:fisər /
of・F・ic(e)・er
[OF 仕事を][F 行う]-ic(e) ところ -er にいる人
※of < 語根 *op- (to work)
将校

perfect / pə’:rfikt /
per・FE・ct
per- すっかり[FE 行った]-ct 成果
完全な

perfection / pərfékʃən /
per・FE・ct・ion
per- すっかり[FE 行った]-ct こと -ion の成果
完全

perfectly / pə’:rfiktli /
per・FE・ct・ly
per- すっかり[FE 行った]-ct 成果の -ly 状態で
完全に

prefect / prí:fekt /
pre・FE・ct
pre- 優先して[FE つくられた]-ct 成果
長官・司令官

prefecture / prí:fekʧər /
pre・FE・ct・ure
pre- 優先して[FE つくられた]-ct ことの -ure 成果
県・府

proficient / prəfíʃənt /
pro・F・ic・ient
pro- 前進して[F 行った]-ic ことの -ient 成果の
※pro-(forward 前進して)
熟練した

profit / prɑ’fit /
pro・FI・t
pro- 前進して[FI 行った]-t 成果
※pro-(forward 前進して)
利益

profitable / prɑ’fitəbl /
pro・FI・t・able
pro- 前進して[FI 行った]-t 成果 -able となり得る
※pro-(forward 前進して)
有益な

qualify / kwɑ’ləfài /
quali・FY
quali- 質を[FY つくる]
資格を与える

qualified / kwɑ’ləfàid /
quali・FI・ed
quali- 質を[FI つくる]-ed ことが完了した
資格のある

qualification / kwɑ`ləfikéiʃən /
quali・F・ic・at・ion
quali- 質を[F つくる]-ic ことの -at 状態の -ion もの
資格

quantify / kwɑ’ntəfài /
quanti・FY
quanti- 量を[FY つくる]
量を定める

sacrifice / sæ’krəfàis /
sacri・F・ice
sacri- 神聖に[F 据える]-ice もの
犠牲

satisfy / sæ’tisfài /
satis・FY
satis- 十分に[FY 行う]
満足させる

satisfaction / sæ`tisfæ’kʃən /
satis・FA・ct・ion
satis- 十分に[FA 行った]-ct ことの -ion 成果
満足

satisfactory / sæ`tisfæ’ktəri /
satis・FA・ct・ory
satis- 十分に[FA 行った]-ct 成果 -ory の
満足な

significantly / signífikəntli /
signi・F・ic・ant・ly
signi- 記録に刻まれるように[F 行った]-ic ことの -ant 状態 -ly で
※signi- < sign 刻印
著しく

sufficiency / səfíʃənsi /
suf・F・ic・iency
suf- 下から上まで[F 行った]-ic こと -iency であること
※suf- < sub-(up from under 下から上まで)
十分であること

sufficient / səfíʃənt /
suf・F・ic・ient
suf- 下から上まで[F 行った]-ic こと -ient の
※suf- < sub-(up from under 下から上まで)
十分な

superficial / sù:pərfíʃəl /
super・F・ic・ial
super- 上に[F つくった]-ic こと -ial の
※super- < *uper- 上に
表面的な

surface / sə’:rfis /
sur・FA・(i)ce
sur- 上に[FA つくった]-(i)ce もの
※sur- < *uper- 上に
表面的な

hypothesis / haipɑ’θəsis /
hypo・THE・sis
hypo- 下に[THE つくる]-sis 条件
※hypo- < *upo- 下に
仮定

古代日本語と DHĒ

北星学園大学短期大学部・元学長の新谷光二氏は、dhē-(IE)と su(PJpn)の対応関係について、次のように記載しています。

IE: (Proto-)Indo-European 印欧祖語
PJpn:Proto-Japanese 日本祖語

母音交替形 dho-(IE)ko-(PJpn)ku > su 為 = do(行う)

(注)k は s と紛れ易い

『印欧語根による日本語の語源学: 日本語の夜明け』新谷光二著、2017年、Kindle より抜粋・引用

印欧祖語の基本形 dhē- > 母音交替形 dho- > 日本祖語 ko- > ku > su という変化を辿ったと記されています。su というのは「る」ですね。

ちなみに、新谷氏の書籍は『The American Heritage Dictionary of the English Language』第3版(1992年)巻末に採録されている INDO-EUROPEAN ROOTS(印欧語根)の595語根すべてについて、日本語の派生語彙を明らかにしたという、驚異的な本です…!

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印欧語根について詳細に知りたい場合は、上の英語辞書より、こちらの語根辞典がオススメ。
語源に関する著作物では、必ずといっていいほど参考文献に挙げられる定番中の定番です!

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また、鳴海日出志氏は、印欧祖語の語根 DHĒ に対応する上代日本語(古代日本語)を次のように記しています。

Jpn. tak-uFaFu  貯 to store[万 IKJ]
*sa- > suw-u 据 to set[万 IKJ]

『日本語と英語の起源 遺伝言語学から見た原インド・ヨーロッパ語根との比較』鳴海日出志著、1997年、北海道出版企画センター より抜粋・引用

出典は『万葉集』、採録辞書は『岩波古語辞典 増訂版』(1990)です。

印欧祖語の語根 DHĒ は、古代日本語に対応語があり、
新谷氏は、上代日本語「su」
鳴海氏は、日本祖語「*sa-」
を挙げているわけです。

鳴海氏の説は下の本から引用しましたが、残念ながら現在、入手不可のようです…

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